冷える石を買った話
ふと視界に入ってしまった、冷やして使う石を買った。
WHISKY STONES と名前の通りウィスキーに入れてみようと思う。
ロフトで3,300円で9つ入っている。
中身は本当に石。
4時間ほど冷凍庫で冷やして使えと書いてあるので冷やすことにした。
……4時間も待てないよ。
2時間ほど冷やして使ってみたが全く冷えなかったのは言うまでもない。それはそれで美味しいので問題は無い。
(こんなグラスしかなかったので今度ちゃんとしたロックグラスを買いたいところでもある)
ちなみに試したウィスキーはこちらの『碧』。
4時間後、缶チューハイに使用してみたが全く効果が見られなかったが、それは液体の量が多いせいだったのだろうとこれを打ちながら気が付いた。
結果、今回はなにも成果は得られなかったが、これがちゃんと冷えるのならば日本酒にも使えるし可能性のある石なのではないかと淡い期待を寄せている。
しかし、ウィスキーはロックで、まずはノンステアでストレート感を楽しみ、次いで少し氷を溶かして加水された感じを楽しむ、ということが好きなのでなんで買ったのか分からなくはなっている。
3時間の滞在 (1)
それは昨夜のことだった。
その日は業後に別の仕事の件で打ち合わせをする予定があり、定時ないし+1時間ほどで退勤する予定でいたのだが、退勤間近になり検証環境が動作しないことが判明した。
ここ半年はソースのデプロイを行っていないのでアプリ側の問題ではなくサーバないしミドルウェアの問題であろうと推測しその原因調査や対応方法を思案していた。
案の定退勤予定時刻には解決せず、打ち合わせをキャンセルした。
原因は分かったが変更には承認フローを通さなくてはならず、今日中の解決は無理だということがわかり帰ることにした。
家の者には今日の夕飯はいらないと言ってしまっていたので食べて帰ることにした。そう、いつもの店へ向かったのだ。
着くと辛うじて1席だけ空きがあり入店することが出来た。
奥の席に常連のSちゃんを捉え、「あけおめ」「ことよろ」と挨拶を交わしたのだが珍しくメガネをしていた。
「メガネ、どうしたの?」
「これね、麦粒腫になっちゃって。大岩さんみたいになっちゃった」
それでメガネか。
そんなに腫れている様子はなかったが、朝は酷かったという。早く治ることを祈った。
私はとりあえず生ビールを注文し何を食べようかいつもの黒板のメニューを凝視した。
いつもそうなのだがそんなに多く食べられる訳では無いのと野菜が好きなのでどうしても偏った注文になってしまう。本当は食べてみたいメニューが沢山ある。
疲れているし心身ともに優しそうなものにしようとふろふき大根を注文した。
料理が来るまでの間に今日の検証環境での現象を調べていた。詳しくは書けないが、普通なら起きない現象だったのだが障害とはいつもそうだ。
多分相当疲れた顔をしていたのだろう。マスターから「疲れてるね」と声をかけられた。
「ちょっとトラブってて」
「大変だね」
この労いの言葉がどれだけ私を癒すのか。そう、私はここに癒されに来ている。
ふろふき大根を食し、その温かさに癒されていると常連のIさんが来店し隣に座った。Iさんは唯一私の仕事の話を理解してくれる人だ。
「Iさん聞いてください!」
「どうしたの?」
と、今日の検証環境の件を一通り話すと「ありえないね」とやはりその言葉が返ってきた。
「しかもAWSですよ!?」
とついに不満が爆発した。
「え、そうなの? それでその現象って……何したの?」
「何もしてないですよ。して無さすぎです。あー明日休むはずだったんですけどねー」
休むというか家でまったり作業をする予定でいた。
「4連休? 罰当たりだね」
「いいじゃないですか。」
「で、解決したの?」
「しないからここに来ました」
本来なら解決策まで決めてから退勤すべきなのだろうがそれは明日にまわした。
するとIさんは豪快に笑いだし「いいね。そういうの好きだよ。」と肯定してくれた。
「俺だったらクレームの電話入れちゃうなぁ。それがダメなところなんだよなぁ」
もし今回クレームを入れるとしたらインフラチーム(他社)なのだろう。しかし今までもインフラ障害は沢山起きてきたがそのようなことをしたことは無いししようと思ったこともなかった。ただ、そういう人もいるんだなと1つ勉強になった。
私は私で定時から抱えていた不満を口から吐き出すと満足し、続いてIさんの愚痴が履かれるターンになった。
ビールグラスが空になりいつも通りグレンリベットをロックで注文すると、なみなみと注がれたそれが渡された。
「入れすぎちゃった」
「じゃぁマスターもなんか飲んで」
「ありがとー」
ちなみにだが、マスターが入れすぎるのは稀ではなく常だ。
そして年始らしくおみくじで何を引いたか話をしているとマスターは2箇所で引いて2箇所とも大吉だったという。
「これは今年ロト6当たるかな。当たったら店1ヶ月休むよ」
それはそれで死活問題だ。
「それは困るから鍵だけ置いてって。勝手に飲んでお金置いていくから」
とSちゃんが名案を口にした。
「じゃぁ作り置きしておくね」
「あと仕入先教えといて。あとは適当にやるから」
「戻ってきたら違う店になってるかもね」
そんな会話をしているとグラスが空いたため、ブラントンのロックを注文すると、マスターが万遍の笑みでグラスを両手で包み込んで渡してきた。
……またなみなみと注がれたそれとマスターの顔を交互に凝視した。
「これ、トリプルとかそんな次元じゃないですよね」
ただでさえここのロックは量が多く、ここに慣れてしまうとBARなどでシングルを頼んだ際に少な過ぎると思ってしまうのに、だ。
「話しながら入れてたからさぁ、つい入れすぎちゃった」
あははははと笑顔なマスター。
「お年賀だよ。お年玉。」
お年玉と言われると悪い気はしないもので、しかもあげる子供が居るならいいがそんな子達も成人しあげる子もいなくなってしまった私にとっては新鮮だった。
ブラントンを時間をかけて消費し、常連客だけでの会話を楽しみ(なんの話しをしたのか覚えていない)、腕時計を確認すると長針と短針がてっぺんを示しておりこれはマズいと急いで帰宅した。
30分の小話 (4)
それは昨夜のことだった。
23時から仕事のある日だったのだが、家のものが飲み会で居ないため夕飯に困り、いつもの店へ足を運んだ。
「おかえり」「ただいま」といつもの挨拶を交わし、「今日23時から仕事をしないといけないので21時には帰ります」と宣言した。
「大変だねぇ。この間Sちゃん(常連)もここで飲んで終電で仕事に向かっていったよ」
Sちゃんは営業職なのだがそんな人でも深夜対応があるのかと少し仲間意識を持ってしまった。
「生る?」「うん生る」
一杯くらい大丈夫だろうといつも通り生ビールを注文し、一杯だけにしますとまた宣言する。
その日は朝から何も食べていなかったので胃に優しそうな和食をチョイスし腹を満たした。
すると、話題に上がったSちゃんが来店したので今日の深夜作業の話をした。
「私もこの間2時から作業があったからビール4,5杯飲んで終電で向かいましたよ。」
4、5杯!?
「流石にウィスキーは避けたけどね」
そうでしょうそうでしょう。ウィスキーはダメでしょう。
「そんなに飲んだら押すボタン間違えそう」
「そんな繊細な作業じゃなかったからなぁ。終わったら来るといいよ」
「いやいや、寝るでしょ」とマスター。
そうですね、寝ますね。
「帰ってお風呂入れば抜けるかなって思ってるんですけど」と安直な考えをしたのは私で、「いや、逆に回るよ。変なスイッチ入るから眠くなるよ?」と現実的なアドバイスを二人からもらう。
それから話題は今年の会社行事についてシフトし、最終日に大掃除をするのかという話が始まった。
するとSちゃんが「毎年キーボードの中からクリップが2、3個出てくるんですよ」と。クリップ?
ラップトップを使用している身だし、以前使っていたキーボードもパンタグラフだったため想像がつかなかった。そもそも紙を使用しない職場にいるためクリップが入りこむシチュエーションも想像がつかないし、クリップ自体置いていない。
「お菓子のゴミならよく出てきます」と私。
「え? デスクでお菓子食べないし」
え? と思わず聞き返してしまう。
デスクでお菓子食べないのか、小腹が空かないのか? うちの会社はおやつの配給がちょくちょくあるし、職業柄か糖分の摂取は必要不可欠だ。
「Sちゃん、それいじめられてるんじゃない?」とマスター。
「誰かに仕込まれてるのかなぁ」
そんな地味ないじめがあるのだろうか。もしかして私のお菓子も誰かに仕組まれているのか? いや、食べているのは事実だしそんな地味な嫌がらせ、誰が得をするのだろうか? いや、嫌がらせ自体誰も得をしないだろう、そうだろう。
「毎年キーボード一個一個外して掃除してるんですよ。で、隣の席の人のキーボード見てはめてさ。」
キーボードのキーなんて外したことがない。大抵裏返して叩くかエアダスターでゴミを掻き出すくらいだ。
と、時間になったので私は帰宅した。
30分の小話 (3)
それはいつも通り行きつけで一人飲んでいる時だった。
22時過ぎに一人で来店され隣に座った女性が、マスターの対応から初来店ということがわかった。小さな手提げ鞄だけをぶら下げており、仕事帰りというよりはちょっと近所までふらっと、という軽装だったことも気になった。
席に着くとまず灰皿を確認し、タバコを置いたので、気兼ねなくタバコが吸えるなと安堵したことはいうまでもない。
そして白ワインのグラスと銀杏焼きを注文していた。
私の吸っているタバコに興味を持ったのか、「珍しいですね、それタバコですか?」と話しかけてきた。私もいい感じに酔っていたので饒舌になっており、この女性との会話を楽しむことにした。
「えぇ、タバコですよ。黒いから珍しいですよね」と自分の指に挟んでいたタバコを改めて眺める。黒く細いこのタバコは確かに自分以外に吸っている人も、知っている人も見たことがなかった。
「パッケージ見せてもらえますか?」
いいですよと渡すと、それをまじまじと観察した。
よかったらどうぞと、一本手渡すとそのまま火をつけ一口吸い込んだ。その姿がとても優雅だったことが印象的だった。
「あ、ちゃんとタバコの味しますね」
そりゃぁそうだ、タバコだもの。
しかし、確かに細くて短いこのタバコは軽そうに見えるのかもしれない。だがしっかり10mmはある。
「普通に売ってないですよね?」
「そうですね、この辺りだと●●という店でしか売ってないです」
「ネットでも?」
「ネットでは売ってるみたいですよ」
「探してみよう。パッケージの写真撮ってもいいですか?」
「えぇ、どうぞ」
そんな会話を交わしていて気がついたことがある。イントネーションだ。標準語には寄せているが語尾に京なまりが混じりとても心地よい音色のようだった。
「こんないいお店があるだなんて知りませんでした。何回も出張で来てるんですけど……。もっと早く知りたかったです。損した気分やわ。」
「出張で?」
「はい、月一でこっちに来ていて。来るたびにネットで調べてフラフラしてるんですけど、気がつきませんでした」
そう、この店はネットには載っていない。飲食店の情報サイトにも登録をしていない。戸口も狭く席数も少ないのでガラス戸の入り口から中を伺うとそれだけで入店を躊躇してしまう。隠れ家といえば絶好の隠れ家だ。
「関西の方ですか?」
聞きたいことを聞いてくれたのはマスターだった。
「はい、京都出身なんです」
やはり。
すると奥で常連の客が「京都の女性は気が強いよな」と発言したのだが、もちろん四方八方から総攻撃を受けたのはいうまでもない(まだ酒も飲んでいなかったのになんでそんなことを言ったのか、今になり疑問に思うところがある)。
その女性とは他にも色々話をしたのだが、酔っていてあまりよく覚えていないのと会社がらみの話しをしていたのでここには書けそうにない。
来月、またあの女性と会えるといいなぁ……。
忘年会の話
昨日は仕事場の忘年会。
14人しかいないのでミーティングスペースにケータリングを並べて立食形式で飲食をするというなんともアットホームな忘年会。オフィス下階の焼き鳥屋からもケータリングを取り焼きたての焼き鳥を食し、8桶n万円の寿司を食べ、好きなだけ酒を飲む。ここは天国か? ……なぜ次の日が平日なのかが悔やまれたがそれ以外は本当に至福の時だった。
途中で「DDボトル」というゲームに混ざった。
1から順番に数字を言っていき、5の倍数の時は「DD」7の倍数の時は「ボトル」と言うシンプルなもの。
ただ程よく酔っている状態なのでうまいこと口にできなかったりする。
間違えた際の罰ゲームは、デュワーズをストレートで一口飲むという優しいものだったのだが、数回行ったところで「デュワーズがなくなっちゃうからやめて!」という一言で終了した。
次に「STICK SATCK」というテーブルゲームを行った。袋から取り出した棒をただ重ねていくだけなのだが、いい感じに酔っている状態なので平時より盛り上がることは間違いない。
ちなみに、この時の罰ゲームは特に設定していなかったのだが負けた酔っ払いがタンクトップ一枚でコンビニまで走っていきシュークリームを買って帰ってきた。美味しかったのは言うまでもない。
ちなみにデュワーズは今回未開封品を用意したにも関わらず会の終了前には飲みきっていた。
そういえばここに来て初めて飲み会に参加したが、帰りの電車でがっつり寝てしまい乗車時間も長いので結構寝ていて降り損ねるところだった。これは危険だ。
帰りの道中、家の人間から「 iPhone を機種変したがデータの引き継ぎができないので帰りを待ちわびている」と連絡があり、 iTunes も iCloud も使わない一番簡単なクイックスタートの記事を送り「じっくり読んで実施すべし」と返信したところ、家に着く頃には引き継ぎはうまくいっているようだった。だが動作確認をして設定し直して繰り返していたら2時を回ってしまった。
寝不足である。
3分の小話( 1 )
朝いつも通りに出勤し仕事に取り掛かっていた。
この時間に出勤してくるのは自分一人で他のメンバーは今くらいの時間から1時間後にかけて集まってくる。そう、この時間は一人集中できる貴重な時間。
いつも通り作業をしていると入り口の扉が開く気配がしたので扉の方を見ると70歳くらいの男性が入ってきた。
この会社は一階に飲食店に理容室、二階にこの会社と美容室、その上は住居が入っているビルでたまに、美容室と間違えて人が入ってくることがある。しかも、この会社が入る前は整骨院だったため整骨院が出て行ったことを知らずにやってくる人もいる。
またそのパターンかと思ったのだが、男性はつかつかとオフィス内に入ってきて私にこう言った。
「いやぁ下の床屋が休みでよう、切ってくれねぇか!」
は?
あぁ、美容室と間違えているのはないかと思い、違うと告げるとまたこう言った。
「知ってるよ。金払うから切ってくれねぇか」
は?
いやいや、うち、システム会社? Web制作会社? だし。
免許のない人がハサミを握ってはいけないことをご存知ないのですか。
丁重にお断りをして外に出てもらい、話だけでも聞いてあげることにしたのだが、この辺に他に床屋はないのかと聞かれてしまった。
私はこの辺りに住んでいないし駅と会社の往復しかしたことがないので皆目見当がつかない。
「この辺に住んでないからわからないですね〜」
という言葉に男性はしぶしぶと帰っていった。
その後ろ姿を見て、確かに髪は伸びているしこういうのは気になったらすぐにでも解決したいと思うのは重々にわかっていたので少々かわいそうだなと思いつつ仕事に戻った。
30分の小話 (2)
それは昨夜のことだった。
知り合いとの飲み会が思いの外早く終わってしまったため、家のものに了承を得て行きつけの飲み屋へ足を運んだのはよかったのだが、店頭の電飾が消え、入り口のドアも明け放れていた。
今日はもう終わってしまったのだろうか。いや、まだ22時前だ。早すぎる。店内を伺うと馴染みの常連の顔が2つ見えた。これはやっているのだろうかと恐る恐る入店すると、私に気が付いたマスターが「ごめん、今日23時までだけどいい? あと1時間」と申し訳なさそうなそうでもないような声で告げた。
私は二軒目だし早く帰ってくるようには言われていたので逆に好都合だった。
カウンター席の一番奥へと進む途中、サーキュレーターが視界に入った。そうか、冷房が壊れたんだ。どうりで外より暑いわけだ。
「ごめんね、冷房壊れちゃって。飲み物だけだけどいい?」
「うん、二軒目だから」
店の一番奥のカウンター席は暑いと思ったが、奥2席しか空いていなかったので苦し紛れに手前の席に座った。すでにアルコールを摂取しているので体は温まっており、汗が垂れてくる。これまた苦し紛れに扇子を取り出し扇ぐことにした。
いつも通りグレンリベットをロックで頼むと、ロックグラスなみなみに注がれたものがやってきた。……いくらお酒が強くても、これはどうなのだろうか?
「今日暑いからさ」
それでこの量……。なんだか逆に申し訳ない。
どうやらエアコンを買い換えたという会話の最中だった。ビルトイン式のエアコンが壊れるのは今年で2回目で、とうとう家庭用のエアコンを買ったらしい。
「結局いくらで買ったの?」
「税込でn万円」
「……ずいぶん安くない?」
「はじめn+1万円って言われて、『14畳用でその値段なの?』て聞いて次に提示された額がそれでさ」
その言葉に、カウンターに座った3人が声を揃えて、「怖かったんだろうね」と口にしたのは言うまでもない。
このマスター。かなりいい風貌をしている。茶髪にピアス、眉は薄っすらだが存在している。おまけにガタイもいい。そして何より厳つい顔……。
さぞ怖かったんだろうねとカウンター3人だけで話をし始める。
「だって、14畳でそんな安いわけないから『10〜12畳のと間違えてないかい?』って意味で14畳でこの値段なのか聞いたんだよ!」
弁明をするがもう遅い。その店員は違う意味で捉えてその金額にしたのだ。
「命の危険を感じたんだろうね」「ですね」
「来月にはその店員さんはもういないかもしれない」「そうだね、辞めちゃってるかもね」
そんなに割引いてしまったので会社からクビになるかもしれないと心配もしたが、どうやら、月に割引ける額というのが決まっているらしい。その店員は今月分を使い切ってしまっていないだろうかと、また心配になってしまった。
「それで、いつ付くの?」「明日」
ちなみに、買いに行ったのは昨日らしい。いくら涼しくなってきたといえまだ暑い日が続きそうな9月、しかも台風がすぎてあちらこちらで室外機が故障し買い換えている中、中1日で付くとは相当怖かったのかもしれない。
「でもさ、それだけ値引きができてこんな短期間で付けられるよう業者を調整できるってことはさ、その子相当できる子なんじゃない?」
確かに。恐怖だけでここまで調整することはできないだろうし、たとえ命の危険を感じたとしても手配するのはまた別の話だ。
「今度何か買うときその子を指定するといいと思うよ」
確かに、家電量販店は個人に売り上げが付くと聞いたことがある。
「名前なんだったっけかなぁ」
かわいそうに全然覚えていないらしい。名刺ももらってないという。
「伝票とかに書いてありますよ、きっと」
レシートに担当者名くらい書いてあるのではと淡い期待を寄せる。
「なんなら誰か紹介してあげるとかしても良いと思う」
「そうだね、今度そうするよ」
はたして、こんな怖い思いをしたであろう人の紹介を快く受けてくれるのだろうか。仕事なんだからそこまで気にしないものだろうか。私なら気にしないだろう。
結局店には1時間半ほど滞在してしまった。