グレンリベット、ロックで

「30分の小話」は大体30分間くらいしてた話をまとめてます。単話です。

冬瓜の話

先週末のことである。

夕飯の買い物へ出かける際に、家族に何が食べたいか伺うと冬瓜が食べたいと言うではないか。じゃぁ梅煮にするか、と提案したが、サバ缶で煮る、と言うのでまぁ、それでもいいかと思い出かけた。

夕飯の買い物の前にアレルギー検査をしに病院へ行かなくてはならず、採血をした。その際に、重いものは持たないでくださいね、と念を押された。その時は何も気にしていなかったのだ。

いざ買い物ということで、メモしてきた食材をそれぞれ買い物かごへ追加していく。その日は雨も降っていて片手は傘で、片手は薬などが入ったカバンで埋まっていた。

気にせず採血した腕で買い物かごを持ち、空いた手で食材を追加していく。

冬瓜なんて1/4くらいの大きさだろうと鷹を括っていたのだが、実際売られていたものは丸々一個だった。

しかも、陳列棚から取り出すのにかなり苦戦をした。なぜなら私の手では小さくひ弱なため鷲掴みにできず、また下に手を入れることはできなかった。

これは困った。

多分、2〜3分は格闘していただろう。みかねた店員の助け舟でようやくそれは買い物かごへ収まった。

買い物へは一人でくるものではないな。

しかしこれはとても恥ずかしい。

そして買い物を終えてそれを受け取るとかなりの重量だった。

そしてここであの言葉を思い出す。

「重いものは持たないでくださいね。」

……この後、ビールを買おうと思っていたのだが持つことはできないだろう。

 

渋々ビールを諦めて一時帰宅し、食材を冷蔵庫へしまい、また出かけなければならなかった。今度は髪を切りに。

出かけている間に冬瓜の調理を頼み、私は美容室へ向かった。

 

軽くなった髪で帰宅すると大きな鍋いっぱいに冬瓜の煮物が出来上がっていた。それはいい。しかし、量だ、量。家の中で一番大きな鍋一杯に作られたそれを見てもしやと思った。

「冬瓜残ってる?」

「全部使った。」

は?

あの量を? 全部? 私の梅煮は?

そしてこの量を消費できるのかと心配をしたのだが、冬瓜は飲みのだから大丈夫だと言うではないか。

そんなこと聞いたことはないと思ったが、それ以前に結婚するまで冬瓜を食べたことがなかったことを思い出す。

しかし作ってしまったものは仕方ない。

 

そしてその冬瓜は2日で消費することができた。するすると喉を通って胃に収まったのだ。

確かに冬瓜は飲み物かもしれない。